新茶の季節到来。そして、今年は田植えを先に終わらせた ~2023年5月~

福本晴華

2023年は桜も2週間程開花が早かったように穏やかな陽気もあり、茶の萌芽も早く進んでいます。例年20日過ぎの初市も本年は16日と大変早かったです。  

D-matchaの畑は、和束の中でも寒い湯船地区に多いので、まだ収穫は本格的に始まっていませんが、最初の収穫を4月29日に行います。また、それ以外の被覆作業はどんどん始まっています。寒冷紗と呼ばれる布を効率的に複数の畑に展開させるため、芽の様子を見ながら被覆期間を決めていく畑もあります。

被覆をすることで葉緑素が増えてミドリが濃くなり、またアミノ酸がタンニンに変わるのを防ぐので、旨味の強いお茶ができます。私は、バリ露地(被覆無)と長期被覆の良いとこどりの「ちょい被」(7日間程度)がかなり好きです。 

そして、田んぼ。店が田の前に移ったこともあり、景観に大きく左右するので、本年は気合を入れました。昨年はGWと田植えと茶の収穫が重なってしまったこと、代掻きに時間をさかなかったり、田が平でなかったので、大量に雑草が発生してしまった反省がありました。 

今年は、冬場から田を造成して効率の良い形である正方形に変え、トラクターを新調して早めに田起こしを行い、雑草にやられてしまった反省から徹底して代かきを行いました。代掻きを複数回行うことで、初期に生えてきた雑草を土中に押し込めること。平らな田を形成することで水持ちの良い田ができ、雑草が生えづらくなること。そして、トロトロな土ができ、苗の発着がよくなることなど、本当に大事な作業です。昨年は甘くみて1回しかやりませんでした。本年は3回はしました。 

地域の御婆ちゃん達からも「今年はよう気合が入っていて、綺麗な田や」と好評です。実りが本当に楽しみ。田に水をいれると、カエルや水鳥が集まってきて、生物の多様性を実感できることも田が好きな要素です。


(田植え@本店前)


(被覆後の畑)


(新芽!) 

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Yumewakaba (Young dream) , Ujihikari ~2023年4月~

福本晴華

2023年3月17日~幼木の新植を行いました!品種は、「ゆめわかば」と「うじひかり」になります。 

昨年の改植の経験を活かし、本当に雑草抜きが大変過ぎたので、今年はマルチを使用し、雑草が生えてくる面積をおさえての実施にしました!9人で植え付けを行い、1日で完了。最近、鹿が非常に多いので、電柵の設置まで実施しました。 

お茶は、樹なので、成木になるまでは約7年、収穫できるようになるまでは4、5年を要します。非常に長期に亘る投資で、回収できるのか未知数ですが、長期が故に今やらないといつになるのかわからないので、毎年改植をしております。

「うじひかり」も「ゆめわかば」も、香や味はもちろんですが、その名前の良さが大きな選定理由になりました。”宇治の光”、”Young leaf dream” は、本当に良いネーミングです。この畑は川沿いにあり、本当に砂地なので、水はけが良く、碾茶や玉露の栽培に良く適しているのではないかと考えております。

  

また、本年は、オムロンさんと協業し、南東向きの畑と北西向きの畑にセンサーを設置しました。気象データや土壌データを常に取得し、その生育や味わいの差の科学的根拠を見出していきたいと考えています。昔の方が仰る、「東向きの畑は香気がええ」や「北向きの茶は直な茶が育つ」といった感覚として理解できる要素をよりデータに落として理解していきたいと考えています。

代表取締役
田中大貴

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Singapore Isetan ~2023年3月~

福本晴華

2023年2月24日~d:matcha 初となる海外催事をシンガポールのIsetanにて、実施しました。初めての試みに対する興奮と不安が交差する非常に刺激的な体験でした。

まず、最も不安だったのが売価です。日本製の製品すべてそうなのですが、日本から冷凍輸送すると、どうしても送料を要し売価が高くなってしまいます。円安、物価差があるとはいえ、日本でも低価格ではない弊社の商品がシンガポールにいってどれだけお客様に受入れて頂けるかは不安でした。また、初めての試みでかつ、会期中に商品発送しても間に合わないので、見込みで12月初旬には商品を発送する必要があったので、もし、催事で全く売れず、商品が残ってしまったら、、という不安もありました。

しかし、結果は想像以上に大盛況でした。

過去にd:matchaにお越し頂いたお客様が想像以上にたくさん売場に足を運んでくださったことが何よりも嬉しかったです。継続的な関係を構築できること、本当に事業をやっていて良かったと思える瞬間でした。

また、初めてのお客様でも試食を出すと、皆さま本物嗜好で我々のお茶の濃いスイーツを「美味しい。お茶の味がしっかりする。風味が強い。甘くない」といった反応で、特にフォンダンショコラやロールケーキが大盛況でした。
想像以上に、茶葉自体をお求めになられる方も多く、次回は新茶をたずさえてまたシンガポールに行きたいと考えています!

 

代表取締役
田中大貴 

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Japanese Tea Selection  ~2023年2月~

福本晴華

本年は3種類のお茶で挑戦しました。どれも、オーガニック栽培です。    

抹茶おくみどり、煎茶ごこう16日間被覆、煎茶おくみどり14日間被覆です。ありがたいことに、抹茶おくみどりは銅賞。煎茶ごこうは銀賞を頂きました。品評会用に栽培したものではなく、常日頃お客様に提供しているお茶でこうした評価を頂けることが何よりも嬉しいです。




(写真の白い服が阿嘉、黒が私、田中)

(新店舗目の前の畑のおくみどり抹茶)

有機栽培の土俵ではなく、すべての茶が出そろう土俵でこのような評価を頂けたことは大変に嬉しいです。特に今年の煎茶ごこうは、摘採のタイミングが自分で収穫している時でもベストだったという実感があります。お茶の品質を決める様々な要因がある中で、この摘採期の大切さは実感しており、湯船が寒冷地で芽の成長がゆっくりで摘採期のスイートスポットが長い、ということが良いお茶に繋がっていると実感しています。2023年はこうした自然環境に向き合いリスペクトしながら、センサー技術による解析を取り入れて、データによる理解やアプローチの検証を行っていく予定です。 

もう一方で、Japanese Tea selectionで印象的だったのは、上位のお茶に九州地域が占める割合が増えていることです。九州は新しい産地が多く、農業全般がそうですが、比較的大規模で、また先進的な取り組みを行っているところも多いです。早くから有機農業や、海外の方が好まれる、火入れを少し強めにした香の強いお茶を作ったりなど、様々な取り組みを行っておられるところが多いです。 

我々d:matchaも、データ解析によりtry and errorの精度を上げながら、新しい取り組みを積極的に行っていき、お茶好きのお客様をもっと増やしていきたいと考えています。

 

代表取締役
田中大貴

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新店舗の完成と移設Open ~2023年1月~

福本晴華

2022年12月に新店舗が完成し、移設Openをしました!   

まず、なによりもオペレーションが大幅に改善されたことが何よりも快適です。以前賃貸借をして使用させて頂いていた建物は元々がスーパーでした。したがって、我々のビジネス(茶製造販売、菓子製造販売、出荷、飲食、観光)を行う上で必ずしも動線が効率的に設計されていたわけではありませんでした。とはいえ、2017年の時点では今のようなビジネスの成り立ちを完全に予想していたわけではないので、丁度良いタイミングでもあります。そし、窓が南面にあることでとても暖かいです。暖房を使用しなくても良いくらい晴れの日は暖かく、体調がさらに良いです。  


(外観:杉板が綺麗)


(目の前の茶畑。霜で白い) 

そして、これから強化をしていきたいことは、来て頂いたお客様に目の前の茶畑や店内から見える菓子工場のstoryも含めた演出を楽しんで頂くサービスを磨いていくことです。今まで観光案内所の隣や、和束町内に飲食店が少ないことから、「d:matchaに来たい」より「他に食べることがないからとりあえず」ということが少なからずありました。もちろん、そうして知って頂いたプラスの面もありますが、一方で繁忙期に偏って忙しくなるため、d:matchaを目的にしてきてくださるお客様へのサービス開発にエネルギーを十分に注げなかった点が反省ではあります。  


(お店から菓子工場が見える)


(幅広い品揃え) 

そうした背景から、新店舗では店内の席利用は事前予約をベースにして頂いたり、店内での注文もモバイルオーダーを活用したりと、より試飲など本来私達がお客様にお届けしたいサービスに時間を割けるように改善をしております。  

2023年は、国内外のお客様によりd:matchaや湯船地区を楽しんで頂けるように、宿や足湯など、新しいコンテンツの開発を継続して行っていきたいと考えています!


(茶畑と一体となった空間) 

代表取締役
田中大貴

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日本家屋 1棟貸プロジェクト ~2022年12月~

福本晴華

茶畑の真ん中にある古民家を改装して1棟貸を進めるべく事業を進めております。
可能な限り元々の日本家屋の素材を活かして工事を進めてもらうようにお願いしています。というのも、知れば知るほど、昔ながらの日本家屋の素晴らしさに魅了されているからです。


(空き家だった古民家)


(解体中の古民家) 

まず、驚くのはその素材のシンプルさです。骨格は「木」基礎は「石」、屋根は「瓦」、壁は「竹」と「藁」で骨格を組んだ後に土を塗って乾かす。古民家を再生するにあたり壊れている部分は除き、基礎骨格や綺麗な壁は残しているのですが、除いた部分もすべて自然に還ります。 


(木の柱と土壁)


(土壁の断面:竹と藁で骨格を組み、土を塗る)

例えば、壊れた壁は、庭の土に戻しました。割れた瓦はさらに砕き、基礎の上、床下に敷き詰められました。これは、瓦の割れた部分が余計な湿気を吸う性質があることを利用するべく再利用しています。残りの瓦は、庭から家屋へと入る際の道造りに活用する予定です。


(元々の瓦を割って、床下に敷き詰め)


(石→丸太→丸太の基礎構造) 

また、基礎は、石の上に丸太を載せたシンプルなもので、全体に揺れやすい構造になっているので、たとえ地震がきたとて建物全体が揺れて、免振の役割を果たすそうです。
日本でも東京生まれの私は、日本の伝統文化や田舎暮らしで知らないことが多く、日本家屋や田舎の暮らしを知れば知るほど、環境負荷が低くて循環型の暮らしをしていることに感銘を受けます。

こうした日本の持つ文化伝統と、テクノロジーを融合して、次なる持続可能なビジネスや生き方を引き続き模索していきたいと考えています。 

 

代表取締役
田中大貴

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新店舗の構造 ~2022年11月~

福本晴華

2022年12月に向けて工事を急ピッチで進めています。  

日々、工事が進み具現化していく様子を見ることはとても楽しいです。今回のお店は周囲にd:matchaの茶畑や田が集積している中心にあり、その景色を楽んで頂くことを主眼に設計していきました。ですので、茶畑側に非常に大きな窓を複数設置していきます。2階からも茶畑が楽しめるような設計にしています。 

また、元々湯船が杉の名産地であったこともあり、「木」を感じることができる建物になっています。梁や天井の木が見えるようなデザインになっています。こうした木や窓、景色を楽しんで頂けるように構造面で設計士さんや大工さんの様々な工夫があります。例えば、柱を細くするために、天井との接合部が3本で立体的になっていたり、など。


(特殊な柱の構造)


(景色を楽しむための巨大窓) 

建物の南面には太陽光パネルを設置し、売電はせず、自社で使用する電気はなるべく再生可能エネルギーとして活用して行く予定です。自然豊かな湯船には、和束町のシンボルでもある、キジがきたり、狐がきたりとたくさんの動物がきます。中には鹿のような害獣もいますが、、 

窓から見える範囲で、花を植えたり、蕎麦を作ったり、今からたくさんの構想が頭に浮かび、たいへんに楽しみです! 


(外観:屋根にはソーラー設置予定)


(外には、キジや狐が良く来る) 

隣の四角い建物は元々縫製工場です。そのため床の木などは重たいミシンに耐えれるようなしっかりとした材料が使われており、再利用する予定です。また、縫製工場ということで、余った生地がたくさんあったので、地元の御婆さんにカーテンにして頂いて再利用しています。


(昔の生地の裁断機)


(生地を再利用したカーテン)

代表取締役
田中大貴

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シンガポールへの出張 ~2022年10月~

福本晴華

2020 年 1 月のフランス出張以来、 実に 3 年ぶりに海外出張をシンガポールで行いました。シンガポールに行くのは 2016 年以来でした。
d:matcha の海外のお客様ではアメリカが一番多いのですが、アジア圏でいうとシンガポールのお客様が一番多いです。

シンガポールへは関西空港からも深夜 便がでており、時差も1時間しかないので、和束にいると東京へ出張するのと感覚としてそんなに変わらないのが本音です。

シンガポールに行って大変驚いたのは、物価の高さと日本に関する商品の充実具合でした。2016 年時点では、日本から直送している菓子などは現地物価だと高すぎるような印象でしたが、シンガポールの成長と円安、日本のデフレが相まっ て、シャトレーゼや Letao など、日本の著名なスイーツブランドは日本からお菓 子を冷凍で運んで販売を行っていて尚値段として成り立つ絶大な人気を博してい ました。シャトレーゼは30店舗以上も展開しています。

もう一つ驚いたのは、ドン・キホーテ。日本では、安いものが雑多に置かれてい る小売店の印象でしたが、シンガポールでは日本の良い食材を割安に取り扱う高 級スーパーのような展開でした。創業者の方が移住してシンガポール事業を率い ているらしく、その成功具合と人気ぶりは、ドン・キホーテが近くにできると地価が上がると言われているほどでした。

久々に海外の刺激をうけ、一層やる気を頂いた貴重な機会でした。


(マリーナベイサンズ)

(donndonndonnki)

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スタンフォードGMIX 6年目 ~2022年9月~

福本晴華

2017年の創業時から縁あって米国スタンフォード大学のMBA(GSB)のGMIXという、学生が世界中の様々な地域でインターンをするプログラムの受け入れ先になっています。毎年面白くて優秀な学生が来てくれることを楽しみにしています。2020年と2021年はコロナ禍の影響で、オンラインでの開催でした。

2022年は、MackとAliceと2名が3年振りに来日してProjectを行っています。学生の中でも、日本の田舎で茶産地である和束町、smallかつfamily businessといった彼らのキャリアとは随分異なる職場、さらには近隣にある京都、奈良、大坂といった観光地、そして東京と、滞在中に幅広い経験ができることが魅力となっており本年も10を超える学生からの応募がありました。

本年は、SNSをより有効に活用して海外も含めたお客様にd:matchaのストーリや数ある活動のupdateを行っていく施策や、定期購買などの継続サポートをして頂いているお客様から望まれるコンテンツの発掘などを提案してもらうプロジェクトを実施しています。 

元々は、コンサルティング業界が社会人としての最初のキャリアだった私ですが、やはり自分の会社となると客観性をもってみることは難しく、彼女達の提案が非常にためになっています。あとは、それをとにかく実行していきます!! 

近代の学生も来て夏は賑やか

滋賀の鰻屋さんにて 


代表取締役 田中大貴 

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湯船への移転、新事業の展開 ~2022年8月~

田中美里

2022年12月を目標にd:matchaの本店を茶園が集中する湯船地区へと移転する計画を進めております。 

茶畑が現在の和束町釜塚の店舗よりも近く、よりシームレスな空間やサービスをご提供できると確信しております。店舗機能だけでなく、宿泊機能や自然エネルギーの発電機能なども付加して行く予定です。

当該計画は昔から考えておりましたが、湯船区は和束町の中でも人口減少が大きく進む超限界集落であり、移ることへの勇気がいりました。実際に2023年春には唯一の公共交通機関であるバスの廃止も噂されております。 

湯船地区での事業を盛り上げることで、この美しい中山間地だからこそできるビジネス的な価値や風景、暮らしなどを遺していけるように努力していきたいと考えています。

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