tea history -12- 日本全国のお茶いろいろ

日和子 矢野

前回の記事では、日本のお茶どころと茶の品種について見てきました。

ひとくちに日本茶といっても、茶には様々な品種と種類があるのでした。

今回は、地域特有のお茶を6つ紹介します。

 

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・村上茶

 

新潟県村上市を中心に栽培されている村上茶。

新潟県の中でも山形県境に近く、実は茶の経済的栽培の北限に当たります。

茶は、かつて重要な換金作物だったこともあり、

日本全国で広く栽培されていました。

しかし、茶は極端な寒さに弱いため、経済的栽培地の北限が新潟県の村上市とされているのです 。

 

新潟県といえば雪国を想像するように、村上市でも冬の間は茶園が雪で真っ白になります。

茶の木が雪に覆われることで、葉の光合成が抑えられ、うまみが増した苦みの少ないお茶になります。

また、積雪に耐えるため、茶の木の樹形を低くして仕立てられているのが特徴的です。

新茶の収穫は5月中旬と、他の地域に比べて遅くなります。

 

・静岡茶

 

栽培面積・生産量ともに全国一位の静岡県。

温暖な気候で日照時間が長いため、茶の栽培に適しています。

 

特に、牧之原台地を中心に栽培されており、日本を代表するお茶の産地となっていますが、その歴史は比較的新しいものです。

明治維新によって職を失った徳川藩士や大井川の川越人足は、牧之原台地で茶畑の開墾にあたりました。

しかし、当時の牧之原台地は、地元の農民に見向きもされないほど荒れ果てていました。

茶の育苗・改植用の水だけでなく、生活に必要な水も十分でなかったようです。

今まで武士として生活してきたため農業の知識もなく、当初は苦労と失敗が続きました。

元武士たちの懸命な努力により、次第に茶の品質が向上してゆきました。

今となっては、お茶の生産量が日本一になっています。

 

牧之原台地以外にも、静岡県の各地で茶の栽培が盛んです。

それぞれの地域ごとに川根茶・本山茶などのブランドがあり、県内のお茶の総称として「静岡茶」と呼ばれています。

 

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・狭山茶

 

全国的に見ると生産量はそれほど多くはありませんが

首都圏を中心に広く親しまれているのが狭山茶です。

埼玉県は隠れた茶の名産地で、東日本で見ると茶の生産量は静岡県に次ぐ規模になっています。

 

狭山茶の始まりは宇治茶に由来します。

鎌倉時代、慈覚大師が宇治茶の種を「中院」のある川越に持ってきました。

これをきっかけにお茶の栽培が始まり、時代とともに茶の栽培地域も拡大してゆきます。

現在、狭山茶は埼玉県入間市を中心として狭山丘陵一帯で生産されています。

肉厚の葉が育つことから、狭山火入れと呼ばれる製法で作られています。

 

狭山火入れとは、

江戸時代に編み出された、通常のお茶を作る工程を終えた後の茶葉に、もう一度火を入れて乾燥させる製法です。 

火入の工程は盛り火・摺り火・抱き火の3段階あり、和紙の上で行われます。 

 

こうして絶妙な火加減で仕上げをすることで、

渋味・味ともに濃く、香ばしい味わいが特徴です。

 

 

・バタバタ茶

 

名前が特徴的なお茶を紹介します。

富山県朝日町を中心に栽培されているバタバタ茶。

お茶を淹れ、バタバタと泡立てることからその名前がつきました。

名前だけでなく、その製法も特徴的です。

 

バタバタ茶は、日本では珍しい後発茶。

後発茶とは、生葉をあえて放置し、

酸化酵素の働きによって独特な色や香りをだすお茶のことです。

同じ製法の茶に、中国のプーアル茶などがあります。

お茶を淹れ、バタバタと泡立てることで、まろやかな味わいが楽しめます。

バタバタ茶は、漢の時代に中国から伝わったとされる黒茶の一つです。

室町時代から仏教の行事に用いられていたとされ、現在でも結婚や出産といったお祝いの席で親しまれているようです。

 

・宇治茶

 

色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす

 

と和歌にも詠まれるように、

日本三大名茶の一つ宇治茶は、高い香りを持ったお茶として知られています。

 

京都、特に宇治は、茶の発展の長い歴史を持つ高級茶の産地として知られています。

 

静岡県や鹿児島県といった茶の大産地と比較しても、抹茶の原料となる碾茶や玉露などの覆い茶の生産が多くなっています。

宇治茶が主に栽培されている場所として、

京都府南部に位置する宇治田原町、和束町などがあります。

 

特に、和束町は宇治茶の約4割を生産しており、碾茶については市町村単位で見ると愛知県西尾市と並んで全国生産量1位・2位を争うほどです。

京都は、伝統ある茶産地というだけでなく、お茶文化の発信地としても重要な役割を担っています。

 

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・やんばる茶

 やんばる茶は日本一早い新茶

山原(やんばる)とは、沖縄本島北部の地域のことで、山や森林など自然が多く残っています。

 

新茶といえば童謡の「茶つみ」に歌われるように5月初旬を思い浮かべますが、

最も早い地域では4月上旬から茶の収穫が始まります。

沖縄でお茶が栽培されていることは意外に感じられるかもしれませんが、

濃厚で甘みのある、深い味わいが特徴です。

 

 

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ここまで、地域特有のお茶を見てきました。

一口にお茶と言っても、地域によって様々な種類があることが分かりました。

今回紹介したのはほんの一部ですが、その地域の気候や風土を反映したお茶作りが行われています。

茶が栽培される土地の特徴や歴史を知ることで、新しいお茶の楽しみ方が生まれるかもしれません。