d:matcha社長 新しい茶栽培と新防霜ファンによる問題解決 〜2021年5月〜

日和子 矢野

本年は、お茶のさらなる可能性の追及、テクノロジーでの茶業の課題解決、糖質オフの健康スイーツ、そして米づくり(稲作!)などチャレンジしていきたいと思っています。「茶」と向き合った場合、我々が現役で収穫に向き合えるのは、あと40回くらいしかありません。1年1年無駄にせず、経営という観点でもやりたいことは全て実現していきたいと思います。  

お茶のさらなる可能性の追及でいうと、マメ科植物を近場で育て、マメ科植物が固定した窒素を肥料の替わりにする方法やカモミールなどのハーブと茶を育てることで無農薬栽培下でも防虫効果を期待できるような農法にチャレンジしようと考えています。また、今期の冬には2品種の京都品種を改植して新たに植える予定です。本質的な「味」を追及することは勿論ですが、そのお茶を育てる背景(環境負荷や健康嗜好など)も含めてお伝えできることが茶農家としての魅力ではないかと感じています。ワインもそうですが、栽培や加工に含まれる情報も含めて楽しんで頂けるようなモノづくりに励みたいと感がえています。 

2021年4月10日は和束町では氷点下まで気温が落ち、防霜ファンでも防ぎきれない程の凍害をうけ和束町中の茶園が大打撃を受けました。d:matchaの茶園も南部に位置する茶園を中心に幾つかの畑は全滅の被害を受けました。防霜ファンは、茶園に付いている大きな扇風機で、茶園上部にある比較的暖かい空気を最も冷たい地表周辺に攪拌して霜を防ぐとても大事な機械です。

↑写真は防霜ファン。センサーがついており4℃以下で作動。空気を攪拌して霜を防ぐ。 

しかし、氷点下まで気温が落ちると効果をなさないこと、1年間のうち2週間程しか動かず、他の時期はブレーカーを落としても毎月使用月の半額の電気料金が結構な金額かかること、年中風車が回っていたり太陽を浴びているのに動かす時は電線で引っ張った電気をつかざる得ないということ。今の技術であれば、使用しない時は、太陽光や風力で電気を発電して売電し、蓄電した電気で必要な時には温風を創出して吹きかけるなど、今の技術ならできるのではないか、と専門家ではないので逆に思ってしまいます。

 新しいファンの開発は、新しいビジネスとしても成り立ち、茶農家や茶産地にも大きなメリットをもたらすのではないかと考え、今は色んな方にお願いしてメーカーの方と繋がって話を進めていきたいところです。  

 一つ一つ、解決したいことは、ただ待つのではなく、最大限動いて解決を図っていきたいと考えています。 



代表取締役 田中大貴



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日本茶における収穫の時期と品質について

TanakaDaiki

日本茶の品質を定義する場合、最も美味しいお茶は、新茶の時期、春に収穫されるものです。京都府和束町では、場所や年度によりますが、4月中旬から5月の中旬の時期を指します。この時期に収穫されたお茶は、新茶と呼ばれたり、一番茶と呼ばれたりします。抹茶の場合ですと、この新茶が点てる用の最高グレードに使用されますし、d:matchaの場合、提供する煎茶は全て1番茶を使用しています。 

なぜ、春の収穫、新茶は美味しいのでしょうか。

それは、大きく2つ理由があります。端的にいうと、春は栄養分が多い芽がでて、その栄養分を失わずに収穫することができるからです。

 まず、第一に茶の樹は、夏頃から秋頃の暖かい時期に土壌の養分をたくさん吸収します。この時期に質の高い有機肥料をしっかりと土に馴染ませて土づくりに投資することが旨味の強いお茶づくりにはとても大切です。驚くべきことに菜種油や魚粉、カキの貝殻、肉分、馬の爪、海藻などなど、香り高く、そのままでも食べれそうなものを土にまきます。d:matchaではこうした有機肥料に加えて、あんこ工場にあんこの製造粕をもらいにいき、畑にまいたりもしています。そしてお茶の樹は、冬場寒くなると休眠状態になり、葉の生育を止めます。そして、春先暖かくなってきたタイミングで、吸収された養分を十分に使用した新芽が成長するのです。したがって、新芽にはテアニンなどのアミノ酸をはじめとした栄養素がたくさん含まれます。 

 第二に、新芽に含まれるテアニンなどのアミノ酸をはじめとする栄養素が、朝霧や寒暖差によって消費されることなく葉に留まり易いことも起因します。茶葉に含まれるテアニンなどのアミノ酸は強い光に当たるとカフェインやカテキンといった渋み成分に変化していきます。しかし、京都府和束町のような谷がちで中央に川が流れているような地形では、春先にはたくさんの霧が発生します。この朝霧が所謂自然のカーテンのように陽の光を遮光しすることで、アミノ酸が芽にとどまり旨味の強いお茶ができます。また、京都府和束町のような高級茶の産地では、寒暖の差が非常に激しいため(例えば最低気温が3℃で最高気温が20℃近い日など春先や秋にはよくあります)、昼間に茶の樹がたくさん光合成をした作った栄養分を、夜は気温が低いので呼吸量が減り無駄に使用することなくとどめることができるため、旨味の強いお茶ができやすです。寒暖差は、茶だけに限らず、野菜など植物一般に適合します。したがって、京都府和束町の野菜は、甘味が強くて美味しいです。

 2番茶は、夏の強い太陽の光によってカフェインやカテキンの量が多くなり、1番茶に比べると渋み苦みの強い味わいになります。また、春先に栄養を使用しいるのでその観点からも1番茶よりも劣る品質となります。d:matchaでは、2番茶をラテ用の抹茶や焼き菓子など、牛乳や砂糖などと使用する商品に活用することが多いです。 

 秋は、秋碾茶や秋番茶などと呼ばれ、非常に安価なお茶へとなります。大規模に使用する用途(ペットボトルやお菓子など)にされることが多く、d:matchaの商品づくりでは使用することがありません。

 京都府宇治市にある手摘み用のお茶の畑や、京都府和束町湯船地区におけるd:matchaの無農薬栽培茶の畑では、1番茶のみを収穫し、2番茶、秋は収穫せずにしっかりと茶の樹を休ませて茶の樹の土台を形成するといった管理の方法もあります。

 1口に日本茶といっても、その種類や品質は様々で、そういった評価の仕組みをわかり易く構築することができれば、と考えております。特に海外向けに英語で発信しているソースは皆無に近く、現在、頑張って英語の本を執筆中です。

d:matcha 代表取締役 田中大貴

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