d:matcha社長 なぜ、和束茶は美味しいのか --和束茶のテロワール 〜2021年6月〜
日本茶の栽培や加工、販売に携わり1日中そのことばかり考えていると、なぜ、和束茶は美味しく、その栽培の歴史も800年を超えるほど続いたかということを科学的にも理解したくなります。私は、昔から和束に住んでいる方や茶農家の人達がいう言葉は真実があり、それを科学的な理由でサポートできると尚面白いと考えています。例えば、「湯船のお茶は美味しいねん」「東向きの畑は香気はええねん」など、皆さんがたくさん経験されている中で導かれた結論なのでそれには信憑性がありますが、私のように「なぜ」が気になる人間はその理由を知りたくなります。詳細は、今後、大学や茶研など色んな研究機関とともに研究を進めることで、明らかにしていきたいと考えています。
今回は、和束の地形、地質について少しお話ししたいと思います。和束町は、複数の地層が複雑に入り組んだ非常に珍しい地形になっています。その土質も、砥石に使われるような石がたくさん含まれ水はけが良いものや、過去にはマンガンなどの微量元素の採掘場になっていた場所など、特徴的な土質が多く、和束町の中でも地域によって、その土の構成が異なることが非常に面白いです。この土質の何が香気に関係をしているかということをある程度関連づけることができればと考えています。
一般に、お茶の樹の場合、水はけが良いほうが根へのストレスが少なく、結果として葉は薄くなり、葉薄故に光合成効率を高めるために葉緑素を増やしてより緑色の濃い葉が自然にできます。そういった意味で和束町には水はけの良い土が多い、という特徴はひとつ高品質の要因になっていると言えると考えます。また、寒暖の差も品質に大きく関わっています。標高の高い原山(200m~400m)、や湯船(200m~300m)ではより寒暖の差が大きく最低気温が和束町内の他の地域と比べても低いことが明らかになっています。寒暖の差と和束の中心を流れる和束側の影響から霧が発生し、霧がほどよく太陽光を遮ることで、被覆栽培をしていなくても、被覆をしたような旨味と濃い緑の茶葉ができるのが地形的な特徴です。さらに、最低気温が低く、湿度も高いことから、茶の成長速度が緩やかで硬化の速度も遅く、芽の収穫の摘採期が長いことも美味しい茶を作れることに大きく起因しています。
このような和束町の地理的、気候的特性と、長年茶農家が培ってきた栽培技術や加工技術、産地としての強みが和束茶の魅力を形成しています。今回は、短い内容の紹介に留まりましたが、よりfactを明らかにして、こういった内容を公開することで皆さんに和束茶のテロワールを楽しんで頂けるような切り口を紹介していければと考えております。
代表取締役 田中大貴