tea history -11- 日本全国のお茶どころ

日和子 矢野

皆さんには、お気に入りのお茶はありますか?

ひとくちに日本茶と言っても、津々浦々に様々なお茶があります。

今回は、日本のお茶どころを見ていきましょう。

 

〜日本のお茶どころ〜

 

茶の生産量第一位といえば何県を思い浮かべますか?

 

荒茶茶生産量で見ると、静岡県都道府県別生産量第1位を誇ります。

国内の茶生産量の約4割を占め、煎茶を中心に生産されています。

煎茶の中でも、深蒸し煎茶の割合が高いのが特徴です。

 

生産量第2位は鹿児島県。広い平地を生かして、大型の機械で効率よく生産を行っています。

茶全体で見ると、静岡県と鹿児島県で国内生産量の7割を占めます。

この後、三重県が続きます。三重県ではかぶせ茶を中心に生産されています。

 

そして第4位は、茶の歴史的産地として知られる京都府です。

鎌倉時代、宋からお茶を持ち帰った栄西から種を贈られた明恵上人が茶園を開いた地、京都では、栄西が持ち帰った種から派生したとされる「宇治茶」が栽培されています。

 

京都府では、和束町や宇治田原を中心として、

高級茶である抹茶と玉露の生産が多く行われています。

抹茶の原料となる碾茶(てんちゃ)と、玉露の生産量で全国1位となっています。

 

京都府内では、和束町の生産量が京都府全体の4割を占めます。

和束茶は、高級とされる宇治茶の中でも高品質な茶として知られており、

特に煎茶はその香り高さが特徴的です。



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上で見たように、日本茶は日本国内で広く栽培されています。

ただし、茶は極端な寒さに弱いことから、新潟県で栽培されている村上茶が、茶の経済的栽培の北限と言われています。

茶は、各地域での気候や地形にあった方法で栽培されてきました。

 

それでは、茶の品種と種類を見ていきましょう。

 

〜茶の品種〜

 

紅茶にアッサム・ダージリン・ジャワなど種類があるように、日本茶にも品種があります。

日本茶の種類は、120種類を超えると言われていますが、

やぶきたが日本の茶園面積の約75%を占めています。

 

やぶきたは、茶の品種改良をする時に、竹やぶの北側に植えられたことからその名がつきました。

生産が安定していて栽培しやすいことから、広く栽培されてきた品種です。

このほか、主な品種としてゆたかみどり・さえみどり・おくみどり・さやまみどりがあります。

近年では、他にも優良な品種が開発されており、茶の品種の多様化が進んでいます。

 

各産地では、どのような茶種が栽培されているのでしょうか?

静岡県では、やぶきたが9割以上を占めます。

一方、比較的温暖な鹿児島県では、早い時期から茶の収穫を行うことができます。早生種が多く栽培されており、品種は多岐に渡ります。

 

京都府では、やぶきたを中心に、晩生のおくみどりも栽培されています。

栽培面積では、やぶきた・おくみどり・さみどり・ごこうと続きます。

おくみどり・ごこうは、京都以外ではなかなか見られない品種です。

 

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茶は、品種によって生育や収穫時期が違います。

ちなみに、同じ品種でも 畑によってお茶の味や香りが少しずつ異なります。

 

〜抹茶の産地〜

 

お抹茶だけでなくスイーツにも使われる抹茶。

抹茶とは、茶(てんちゃ)を石臼等で挽いて粉状にしたものです。

 

宇治抹茶の名で知られるように、抹茶の生産量は京都府が第1位。

市町村単位では、和束町が愛知県西尾市と並んで碾茶全国生産量1位・2位を争っています。
京都府は、茶園面積では静岡県や鹿児島県のような大産地には及びませんが、

高級茶を多く生産しています。

 

抹茶の原料となる碾茶の栽培が多いのは、京都のお茶文化の影響だけではありません。

長い年月の中で育まれた、碾茶栽培の技術があるのです。

茶は、収穫前の3週間~1ヶ月程度覆いを被せて栽培されます。

 

覆いを被せる栽培方法は、室町時代まで遡ります。

当時、宇治では夜間の低い気温で霜が降ると、せっかく育てた新芽が傷んでしまいました。

そこで、ムシロで茶の木を覆うことで、霜から新芽を守る方法が編み出されました。

 

19世紀後期まで、

この栽培方法による碾の栽培は、宇治の茶師のみにしか認められていませんでした。

宇治の茶師たちは、長い年月をかけて栽培技術を高めてきたのです。

このように、宇治ではその歴史的背景から、高い品質の抹茶を栽培できるのです。

このうち、和束町では京都産宇治茶の約4割を生産しています。

高い品質と、美しい茶畑の景観からお茶の桃源郷「茶源郷」と呼ばれ、全国的に名高い煎茶と碾茶の産地です。

 

 

〜かぶせ茶の産地〜

 

知る人ぞ知るかぶせ茶。

 

その名の通り、収穫前の1〜2週間程度、覆いをかぶせて育てられます。

新芽の生育期間中に日光を遮ることで、旨味が増した渋味の少ない茶になります。

また、 覆い香と呼ばれる格別の香りが生まれ、色も鮮やかになります。

 

かぶせ茶は、煎茶と玉露の良いとこ取り と説明されます。

被覆をしない煎茶と、20〜30日被覆を行う玉露の中間にあたる、7〜14日程度覆いをするためです。

玉露が持つ独特な甘みと、煎茶の渋みのバランスが良いお茶です。

 

そんなかぶせ茶は、三重県が生産量トップを誇ります。

京都府は、かぶせ茶の生産量第4位。

上で紹介したように、茶に覆いを被せて育てる技術が発達しているため、

宇治特に和束は美味しいかぶせ茶でも知られています。