日本茶と健康

健康 インタビュー

静岡大学 茶山和敏准教授インタビュー
お茶に含まれる成分の健康機能性

静岡大学 茶山和敏准教授インタビュー

日本茶の持つ健康効果には様々な研究成果が発表されていますが、その内容がどんなものなのかは実際はわかりにくいもの。
そこで、静岡大学の茶山先生にインタビューを行い、最新の研究結果をわかりやすく教えて頂きました。日本茶で太らなくなる、といわれることもありますが、実際どのようなメカニズムが働いているのでしょうか・・・?

日本茶の持つ健康効果について勉強するため
静岡大学へインタビューにいってきました。

静岡大学 茶山和敏准教授
静岡大学学術院 農学領域
応用生命科学専攻
准教授 茶山和敏

食品成分及び天然物由来成分の生理学的機能性に関する研究に従事。お茶から抽出される成分の持つ機能性についての研究論文を多数執筆。

インタビュアー:田中美里
インタビュアー:田中美里

d:matcha Kyotoの創業メンバーのひとり。茶道や着付けなどの日本文化の勉強に夢中。実家は愛媛で代々続く、みかん農家。

お茶の研究に取り組んだきっかけはがん治療の研究

お茶の研究に取り組んだきっかけはがん治療の研究
早速ですが、先生がお茶の研究に取り組まれたきっかけを教えてください。
実は、最初からお茶の研究をしようと思っていたわけではないんです。私は、もともと東大の医科学研究所で乳がんの研究をしていたんですね。そんなある日、静岡県にある川根地方で、がんの発生が少ない、という疫学調査を知ったんです。要は、お茶を多く作っている地域の人はがんが少ないという。その調査を知った、当時の私の指導教員から、お茶をテーマにしてみないかと。それがきっかけで、お茶を生物に投与するような実験を始めました。
なるほど、いきなりお茶にいったのではなく、ある程度の予測があったのですね。
それでも、最初からうまくいったわけではなくて、いい結果はいきなりでなかった。そのあと、ご縁があって静岡大学に赴任することになり、やっぱりお茶処なのでお茶の研究を引き続き、やろうと。次はがんではなくて、エイズに効くかどうかも研究したんです
エイズに効く、なんてことがわかったらそれこそすごい結果ですね・・。
まあこの研究ではうまくデータは取れなかったんですけどね・・・。しかし、この実験がきっかけになりました。

解剖してびっくり。
お茶を投与したマウスに起きた変化とは・・・?

解剖してびっくり。お茶を投与したマウスに起きた変化とは・・・?
マウスにお茶の投与実験をしていたのですが、実験の後は分析のため、解剖をして臓器のチェックや、血液分析をするんです。その調査のために動物を解剖したときに気づいたのですが、明らかにお腹の中の脂肪の量が少なかったんですね。
なんと!
後からデータをとったんですが、この時は脂肪の重量が40%も減っていた。そこから、改めて実験をはじめたんです。マウスの餌の中に、粉末のお茶を混ぜて1%・2%・4%と割合を変えて長期間投与したんです。すると、2%以上になるとはっきりと脂肪が少ないことがわかりました。血中の脂質も減っていくんですね。ここから、お茶の成分には脂肪蓄積を抑制する効果があると考えるようになりました。
素晴らしい結果ですね・・・!
これらの結果から、お茶に含まれる成分をベースにした、特定保健用食品、いわゆるトクホが登場するきっかけになりましたね。

お茶に含まれる基本的な3つの成分からわかった抗肥満作用

お茶特有の旨味成分である「テアニン」の化学式
お茶に含まれる成分は様々で、カテキン、テアニン、カフェインが有名です。ビタミンC等、他にも様々な成分が入っていますが、お茶に特有の成分ということで、カテキンとテアニンがよく研究の対象となります。
カフェインというと、あまりたくさん摂取できないという方もいらっしゃいますが・・
もちろんカフェインを摂りすぎるのはよくないと思います。ただ、カフェインは時々悪者として言われることがありますが、実はお茶の成分の中では重要な働きをしているんです。ひとつには味。カフェインが多すぎると雑味として感じられるんだけど、カフェインがゼロでは味に深みがなくなってしまいます。
カフェインには味がないと思っていましたが、味を語る上でも重要なんですね。
そして、カフェインは機能性成分としても重要です。カテキン・テアニン・カフェインをそれぞれ投与する実験をすべての組み合わせで行ったんですが、カテキン・カフェインを組み合わせたものが、最も抗肥満作用があることがわかったんです。
具体的には、どのような作用が働いて抗肥満作用が働いているのでしょうか?
肝臓がつくる酵素に作用します。肝臓は、大きく分けて脂肪を合成する酵素と、分解する酵素の2種類を作り出します。カテキンとカフェインの組み合わせは、脂肪を合成する酵素の量を減らしつつ、酵素活性を下げる効果があり、かつ脂肪を分解する酵素の量を増やし、活性は上げる。つまり、脂肪が増えにくくなり、かつ減らしやすくなる、という両輪の効果があることがわかったんですね。
脂肪が増えにくくなり、かつ減らしやすくなるというのは非常に嬉しい研究結果ですね。それをきくとカテキンがしっかり含まれている煎茶や玉露などを飲みたくなります。

摂食を抑制する効果も!

脂肪の蓄積が抑制される効果以外にも、摂食抑制効果も研究で確認されています。インクレチン、という腸からでるホルモンがあるのですが、簡単にいうと、これ以上食べる必要がないよ~という判断を身体に指示します
なるほど、確かに食べ過ぎてしまうことは、太ってしまう理由ですので、摂食抑制、つまり早くに満腹感を感じるようになることで、食べ過ぎを防止することができるのですね。
そうですね、食後にお茶を飲むとほっとする、ということはよく言われますが、これ以上食べなくていいよ、という指令がお茶を飲むと出やすいのかもしれませんね。あくまで、これらはマウスを用いた動物実験の結果なので、ヒトに応用する際には注意が必要ですが、日本茶の持つ成分には期待ができるところです。

お茶に関するこれからの研究

静岡大学農学部ラウンジ
ここ最近注目が集まっていて、お茶の成分についての研究はかなり進められてきました。どのように作用して、お茶が身体の機能に影響を与えているかのメカニズムや、ヒトに対する応用なども日々新しい発見がされています。更に成分の研究が進むこともそうですが、お茶の成分(カテキン、テアニン、カフェインなど)と、新しい成分が組み合わされて、機能が相乗的に増幅されるような研究も進んでいくと思います。
組み合わせによって、何か機能が増幅されるような事例はあるのでしょうか?
例えば、べにふうきという品種のお茶と、生姜の組み合わせの研究があります。私もサポートした研究ですが、もともと生姜に熱産生効果や代謝を上げる成分がので、それらを組み合わせるとどうか、という実験がされています。べにふうきと生姜を合わせると、脂肪蓄積抑制効果が相乗的に高まる、とマウスの実験からわかっています。
お茶以外の食材を加えることで、美味しくお茶が飲めるようになることはもちろん、健康機能も高まることがわかればなお嬉しいですね。

インタビューを終えて

茶山先生には、お茶の最新の研究結果をかみ砕いて、非常にわかりやすく解説を頂きました。古くから、世界中で様々な方法で飲用されているお茶。昔から人々が伝えてきた「健康に良い」という経験値も、最新の科学によってそのメカニズムが次々と明らかにされています。今こそ、日本茶を再発見し、日々の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

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