d:matcha通信(2020年10月号)①農業部門

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田中美里

夏場の新梢抑制剪定!

 自社の茶園の管理において、普段とは異なるタイミングで剪定を行うことがあります。それは中刈りや深刈りなどの強剪定を行った茶園の夏場に行う新梢抑制剪定です。

 夏から秋にかけて、強剪定を行った茶園は通常の管理のそれに比べより長く伸長し、より太い茎を作ります。その理由は、深く刈り落された枝は幾つもの分枝点をさかのぼるため、芽の基盤となる枝が太く、その数が少ないため、水分や養分がより集約的に供給され、樹勢が強い芽が成長するためです。

 しかし、その再分化した芽の根本付近を見てみると、勢いよく成長する上位の芽と、その脇から伸長する弱々しい複数の下位の芽があることがあります。これらの下位の芽は受光体勢が低く、2~3葉程の葉つけてそれ以上伸びることはありません。

 下位の芽は秋の剪定の際、十分に伸長しないため剪定されずに、茶園の表層に埋もれます。そして翌年の春。これらの埋もれた芽は一番茶の収穫物に寄与することは稀です。私は、これらの飾り物の枝を非有効芽数と表現することがあります。有効芽数を増やし、一つ一つの枝を充実させることは、収量の増加だけではなく品質向上においても非常に重要な要因となります。

 新梢抑制剪定とはこれらの問題を回避するために行います。夏、勢いよく伸びた上位の芽はすぐに6葉程の葉を付け30㎝以上にも伸長します。このタイミングで頂点を含む1~2葉を剪定により除去すると、これ以上の伸長を止めることができます。伸長が止まった上位の芽に使われるはずの栄養源は必然的に下位の芽に供給されます。この頂芽優勢の解除と供給先の変化は、下位の芽に成長の機会を与えることになります。これにより、均一に充実した有効芽数を増やすことが出来るのです。ただ、夏場35℃付近までになる炎天下の中、この作業を行うのはとても大変です。

上)抑制剪定を行い、有効芽数が増え、均一に枝が充実した様子 下)抑制剪定を行わず、上位の芽が優先的に伸長し不均一な様子